大学生の頃、神戸で一人暮らしをしながらアルバイトで稼いで生活していました。家賃無料の特待生寮に住んでいたので、生活費と留学用の貯金のためのバイトです。
何のバイトをしてた?
老舗喫茶のホール、単発の派遣、イベントスタッフ、、、色々と経験してみました。幼児教室のダンスや英語の講師をしていたこともあります。手を出して辞めてを繰り返したわけではなく、いくつか並行してお世話になっていました。
そんななか一番長く続けたアルバイトは、ラウンジのホステスでした。私はホステスによって相当鍛えられたと思っていて、経験に感謝しています。大学2年からスタートし、留学でお休みして、卒業するまでの間、ずっとお世話になりました。
なぜホステスをはじめたのか
大学でお世話になっている先輩に「バイト先が女の子募集しとるけん、こん?」とお誘いを受けたのがきっかけです。当時の私は、水商売に全く興味がなく、むしろ少し偏見すら持っていたので、ラウンジで働こうという気は全くありませんでした。
ただ、先輩の顔は立てたいという想いがあったので、面接だけは受けさせてもらうことにしたのです。そして初めて足を踏み入れる、夜の神戸・三宮。最終的にはお断りするんだから身構えなくていい、でも先輩の顔に泥をぬるわけにはいかない。そんな気持ちでお店に入ったのでした。
そこで初めてお会いしたママが、まぁチャーミングだこと!今でも面接のときのことは覚えています。おおらかで明るくて、ファンになりました。この人の元でならホステスをやってみたい、そう思ったのです。
ホステスが私を”シマウマ”にした
ホステスをしていると、目の前のことだけを見ていればいいわけではありません。自分が付いているお客様にはもちろん集中しつつ、それ以外のお店の全体にアンテナを張り続ける必要があります。ずっとレーダーを張っているようなイメージです。
ここでの経験で、文字通りの意味で視野が広がったと思っています。大学で他にもホステスをやっている友人がいたのですが、彼女も同じことを言っていました。そこで「うちらシマウマやな」と笑い合ったものでした。
自分の目の前のお客様だけ見ていても、正直仕事にはなります。しかし、私自身は水商売は連携プレーだと思っていて、周りの様子も見て臨機応変に対応するようにしていました。
今でも「よく気が付いたね」と言っていただけることがあります。まだまだ足りないですし、改善していきたいとは思っていますが、目配りを鍛えてくれたことにありがたいと思います。
脳内に顧客リストを
ほとんどが常連様のお店だったので、私が最も気を付けていたのは、前回までのやり取りを覚えているかです。服装や髪形まで覚えようと集中しました。座席まで覚えておくと、次回ご案内の際に参考になってよいです。
誰でもそうですが、自分に関心を持って記憶に留めておいてくれると嬉しいもの。たくさんいるお客様の一人ではなく、一人ひとり特別なお客様ですよ、というのを示すために、私はいつも前回のご来店時の話題を出すように心がけていました。
ノートに書き留めてもよかったのですが、もしどこかで落としてしまったら個人情報にもほどがある!と怖くなり、極力脳内に収めることに。約束や記念日以外は極力データとして残さないようにしました。
大人な会話と場の流れ
お店での会話も、お仕事のことや世の中のことなど、大学での学生同士の会話では出てこないような言葉が沢山行きかいます。何を話しているのかが分からなくて、大学の図書館で新聞を読み、ニュースをチェックするようになったのは、ホステスのためでした。
そして、ただ会話に参加すればいいというものでもありません。場の空気に合わせて、自分は引っ込んでおくことも時には大事です。そうやって、流れを目で見るように意識できるようになったと思います。
流れが見えてくると、今度はその場に居る人々の人間関係も感じられるようになります。このなかでキーパーソンは誰なのか。接客をするうえでは、早めに掴んでおくべき非常に大事なポイントです。
経験を先取りさせていただける
お客様のなかには、下心なく「せっかく出会えたから色々経験させてあげたい」と、連れ出してくれる方がいます。学生だったので余計に、親心のようなものが湧くそうです。
自分ひとりでは到底入れないような料亭に連れて行っていただき、そこでの振る舞いについて教えていただいたり、少し背伸びした体験をさせていただけました。お客様に恥をかかせるわけにはいきませんから、相当な緊張感でした。
慣れない場に連れ出していただいたおかげで、初めての場所でも悠々とした態度をみせることができるようになったと思っています。(内心はびくびくですが笑)
女どうしのギスギスはなかったか
少し変わったお店で、個人売上のランキングなどが明示されていませんでした。「女の子どうしに仲良くしてもらって、お客様がリラックスできる空間にしたい」というお店の考えです。同伴回数や指名のお客様などを見ていれば、誰が人気なのはすぐにわかるのですが、ママのお店作りに賛同する女の子しかお店には残らないので、本当にアットホームな場所でした。
女の世界だからイジメが怖い、なんてイメージを持たれがちなのですが、これはお店に寄ります。私が居たお店は、むしろお姉さん達が優しすぎるほどの恵まれた環境でした。
就活では何と説明した?
水商売は、残念ながら、穿った見方をされる職業であるのは事実です。真摯に真面目にお仕事をされている方がほとんどですし、そういった方しか生き残れない世界ではあります。
しかし、誤解されても仕方のないようなやり方をしている人がいるのも事実。目立つ行為がマスコミに取り上げられてしまうので、あまり公に胸を張ってホステス経験を紹介することはできませんでした。
だからと言って、ホステスで経験したことを隠すのはもったいないと感じたので、「会員制のウィスキーバーで黒服のようなことをしていた」ということにしていました。勘付いた面接官もいるとは思います(笑)だからと言って、責められるようなことはなかったですね。エピソードを通して、自分自身を紹介するのが目的ですから。
もちろん…
ホステスをやっていて困ったことはありました。ちょっと変わったお客様もいましたし…。それはまた別の機会でご紹介したいと思います。
HANAE