アメリカ留学中、写真好きの友人の練習台として被写体になったことがきっかけで、それ以来、学業や仕事の傍ら、細く長く、被写体として活動を続けています。沢山の作品作りに関わらせていただき、プロフェッショナルな現場も幾度か経験しました。DOVEのプロモーションにも参加しているので、ぜひそちらの動画もご覧ください^^
ファッションモデルだけじゃない
まず、モデルと言っても、雑誌に登場するようなファッションモデルばかりではありません。主に私がやっていることをカテゴリー分けに入れるなら、ポートレートモデルの分野になります。カメラマンなどアーティストさんの作品撮りに参加するものです。モデルというとファッションモデルを想像される方が多いので、私自身は被写体という言い方で、自分を紹介するようにしています。
毎回がラストセッション
被写体として活動を始めて、約8年が経ちました。振り返ると随分長く続けられているな、と有難く思っています。
私は芸能事務所に入っているわけでもなく、SNSなどで撮影者募集をしたこともありません。これまでずっと、人と人との繋がりで撮影の機会をいただいてきました。だから、「撮りたい」がいなくなれば、「紹介してあげたい」がなくなれば、私の被写体人生は続いていかないでしょう。
次の機会はないかもしれない…これが最後の撮影になるかもしれない…毎回そう思って、ひとつひとつ丁寧に撮影に臨んでいます。
確かに、何度撮影を経験しても、後悔と反省はつきものです。自分に100点をつけてあげられる撮影なんて一度もない。
それでも、いや、だからこそ、撮影日から逆算して心身ともに事前準備をしたり、撮影陣と積極的にコミュニケーションを取って求められることを汲み取ったり、そのときに出来ることを考えて、謙虚に行動するようにしています。
以前、芸能関係でもお仕事をしているファッションスタイリストの方に「そこらへんの安いプロより、よっぽどプロフェッショナルだよ」と言っていただけたときは本当に嬉しかったです。
「私だけ」が写っているのではない
出来上がった作品を見て、そこに写っているのが自分だと思わないです。正確には「自分ひとり」とは思っていません。
「自分+写真には写らないカメラマンやスタッフ」がそこには確実にいるので、全員が合わさった結果の集合体として、写真に投影されていると解釈しています。
たまたま最終的に写っている人物が、私ひとりなだけ。素敵な撮影だったな、美しい写真だな、と思っても、驕ってしまったり、決して勘違いしてはいけないのだと、いつも心に留めています。
撮影で緊張しないわけ
「恥ずかしくなったり緊張したりしないんですか」「なぜカメラを前に堂々とできるんですか」と、よく聞かれます。いつもは「堂々しとぉ方が撮りやすいやん?」と笑ってお返事しています(笑)
被写体として在るとき、私には「こう見せたい」がないんです。自分はカメラマンが作り上げる世界の構成要素のひとつでしかないから、私自身が前面に出てはいけないと思っています。変なこだわりを捨ててしまうのです。
可愛い角度も、決め顔も、恥じらいもない。ある意味、失敗がない。守りに入らなくていいんです。ゆえに躊躇がない。だから堂々としていられるのです。
そして前述の通り、毎回最後かもという気持ちでいるので恥ずかしいとか不安とか、そんなことを考えるほどの心の余裕がない。全力で楽しむしかないんです。
もちろんカメラマンさんの「こう撮りたい」をかなえられるか、プレッシャーを感じることはあります。「一緒に撮影できてよかった」「あなたでよかった」と言ってもらいたいですもの。攻めの緊張感は張り合いになってくれるので、むしろ味方です。
呼吸の合わせ方
撮影においては、どうぞ私の身体をお使いください、という気持ちでいます。言うなれば、単なる素材になりきってしまうのです。なるべく自我のスイッチを切ってしまうくらいの心持ちで、スタートするようにしています。
そして、カメラマンさんの息遣いや、シャッターを押すリズムに集中します。ほしいものは何かを感じようとアンテナを張る、時には言葉から、時には表情から。コミュニケーションを大事にカメラマンさんの心の動きを感じて、そこに合わせていくと、シャッターのタイミングも自然と揃ってきます。
初めて一緒に作品を作るカメラマンさんだと、なかなか息が合わないこともあります。不協和音から始まっても、だんだんと連弾のようになっていって最終的に呼吸がそろったデュオになるのは、快感です。
余談ですが、撮影で息が合うと、同性であっても、セックスも合うんじゃないかと思ったりします(突然の下ネタで失敬)それくらいに、呼吸がそろうと肌が粟立つのです。ある時、勇気を出して、カメラマンさんにこのことについて尋ねたところ、「わかる!」と言ってもらえて、なぜか安心しました(笑)
表情のヒント
それぞれの場所に見合った表情や動きを出したいなら、その場所に存在することを強く感じることがヒントになると思っています。花の匂い、雑踏の声、空気の張り具合…そのモーメントを生きている感覚を高めると、自然とその場にそぐう顔つきや動きができます。
ポージングがうまくできなかったとしても、感じようとすることで確実に変化する部分があります。瞳。そして指先です。
写真という小さな世界の中で、この二つが変化するだけで世界観が大きく変わります。被写体を始めて間もない頃は、大きな動きにとらわれがちでしたが、今では、目と指先の2つが、とても重要な要素になると思い、気を配っています。
これからのこと
前述のとおり、人との繋がりのおかげで被写体として活動を続けてきました。これからも撮影の機会があれば光栄に思いますし、その気持ちを結果で返せるよう真摯に取り組みたく思います。
HANAE